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石巻×文化 特別インタビュー 第1弾 石巻×アート<Reborn-Art Festival/THE ROOMERS’ GARDEN>

 石巻に文化は根付かないーー。そんな言葉を耳にしたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、今の石巻の街中を巡ると、そんな言葉があること自体を疑ってしまうほど、文化的な活動に取り組む人々や拠点が数多く見られます。今回の特別インタビューでは、特に震災後に活発な動きを見せている石巻の文化活動にスポットを当て、“文化の街・石巻”の今を発信していこうと思います。
 全3回の第1弾では、2017年から始まったアートと食と音楽の総合芸術祭・Reborn-Art Festival(以下・RAF)事務局の志村春海さん(33)と、そのRAFをきっかけに石巻に移住し、今年5月にアートギャラリー「THE ROOMERS’ GARDEN」を開設した平野将麻さん(21)にインタビューし、それぞれの活動の経緯や思いを伺いました。

「石巻らしい表現や反応が生まれる機会に」 ー Reborn-Art Festival事務局 志村春海さん

Profile|志村春海さん(しむら・はるみ)
1988年、石巻市生まれ、東松島市育ち。野蒜小、鳴瀬第二中、宮城野高校美術科を経て、筑波大学芸術専門学群を卒業。大学卒業後は、関東を中心に美術や街づくりの仕事に携わり、2016年にRAF開催に向けてスタッフとして働くことになりUターン。現在は、アーティストと地域のコーディネート役などを担っている。

ー今年はRAFの第3回夏会期が行われましたが、RAFが始まった経緯を改めて教えていただけますか?

 東日本大震災の直後、RAF実行委員会の母体である「ap bank」が震災の支援活動で石巻専修大学にボランティアベースを設けたことがきっかけでした。そこから、より継続的な支援のあり方を模索する中で生まれたのが芸術祭というアイデア。ap bankの代表である小林(小林武史さん)が新潟県の「大地の芸術祭」を訪れた際、芸術祭ならではの可能性を感じたようです。

ー石巻の中でも牡鹿半島をメインの会場としたのはなぜだったのでしょうか?

 震災後の支援や、震災からの復興事業はどの被災地でも中心部が優先され、周縁は取り残されることが多かったですよね。実際に、牡鹿半島でもそのような状況でした。だからこそ、「そうした地域に光を当てることはできないか」という思いがあったと聞いています。また、石巻でも特に海や山が身近に感じられる場所であることもやはり大きな理由だったようです。

ー過去3回の開催で、地域との関わりも深まってきているのではないでしょうか?

 まず実感しているのは、RAFの存在や内容が地域に浸透してきていることです。始まる前は「何? リボンを結ぶ芸術祭?」とよく言われていましたからね(笑)。今ではRAFと言えば、「あの白い鹿(名和晃平さんの「White Deer(oshika)」)のやつね」と言ってもらえるようになりました。そうした小さな一歩がとても大事なことだと思っています。ただ一方で、美しいものだけではなく、心地良くはないものや理解ができないものも含めて、さまざまな作品に触れることができ、また、多様な存在が共存できる地域になるといいなという気持ちも強くあります。アーティストごとにさまざまな考え方があるので、作品に触れた方の中で価値観が広がっていくきっかけになれば嬉しいですね。 

ー震災から10年を迎えて、改めて石巻を舞台としていることの意味合いについてどのように感じていますか?

 RAFは、完成した作品をただ持ってくるのではなく、キュレーターやアーティストが石巻に実際に滞在する中で感じたものをアウトプットする場所だと考えています。そうした作品だからこそ、自分一人では見られなかった世界を見せてくれる。なので、鑑賞される方にとって作品や新しい価値観と出会う大切な場にしていくのと同時に、アーティストにとっても石巻という場所での制作が大切な機会になってほしいと考えています。石巻だからできたこと、石巻だから考えられたこと、そこから本当の意味での反応がたくさん生まれてほしいですね。

ー実際にRAFが始まって以降、アーティストが移住するなどして、石巻の街中には3つのアートギャラリーが生まれました。こうした動きはどのように感じていますか?

 とても素敵ですよね。やはりRAFだけが盛り上がるというのは違うと思っています。RAFは基本的に会期中以外は、アーティストの制作などはあっても、それが表には見えづらいんです。そうした時でも、地元で表現をしている人やアートシーンがあると、それが地域への入り口やヒントにもなっていくと思うんです。そうした意味でも、地元のアートシーンが盛り上がっているというのは本当に素敵なことだと思います。

ー最後に、来年の4月にはRAFの第3回の春会期も控えています。どのようなものになるのでしょうか?

 正直、今の段階でお伝えできることは少ないのですが、今回はRAFの第1回から関わってくださっている和多利恵津子さん・浩一さんのお二人がキュレーターを務めます。石巻の風景も初回の2017年の頃とは大きく変わってきたので、それを踏まえた内容にできたらいいといったことが話されているようです。ですが、私もまだ全貌は分かりません(笑)。皆さんにも楽しみにお待ちいただければ嬉しいですね。

Reborn-Art Festival 2021-2022
公式HP|https://www.reborn-art-fes.jp/


「地域とアートをつなぐ不思議な庭に」 ー THE ROOMERS’ GARDEN 代表・平野将麻さん

Profile|平野将麻さん(ひらの・しょうま)
2000年、松島町生まれ。松島第二小、松島中、宮城野高校普通科出身。東北芸術工科大学グラフィックデザイン学科中退。2019年12月ー2021年1月まで「ART DRUG CENTER」にて「メイドルーム。」を運営。2020年4月に石巻に移住。今年5月には石巻市内にギャラリー「THE ROOMERS’ GARDEN 」を開設。

ーはじめに今年5月に開設した「THE ROOMERS’ GARDEN 」について教えてください。

 元々人が生活していた建物の3ー4階部分を利用したギャラリーで、今年の5月のグループ展でスタートを切りました。その時には建物の1階にある「復興バー」とのコラボイベントも開催して、そのおかげでアートに興味がある人だけでなく、それ以外の地域の方にも知ってもらうことができたと感じています。ギャラリーの名前は直訳すれば「下宿人の庭」を意味します。「庭」は自己表現の一部であるプライベートなものでありながら、外にも開かれているものだと思うんですが、ここもそうした地域と現代アートをつなぐ中間の存在にしたい、という思いを込めました。

ー平野さんが現代美術に魅了されたきっかけは?

 元々絵や写真は好きだったんですが、「現代美術」をやろうと決めた一番のきっかけは、高校2年生の時に開かれたRAFの第1回に足を運んだことだったかもしれません。実は僕、現代美術で一番最初に面白いと思ったのが小学校低学年の時に本で見た草間彌生さんの作品なんですよね。それを石巻で実際に見ることができた。その時の「分からないものと対峙する」ような体験がすごく印象に残って、「分からないものを自分で作るのって面白いだろうな」と強く思うようになったんです。そこから放課後に勝手に美術科の先生に教えてもらいに行ったりしながら、東北芸術工科大学に進むことにしたんです。

ーただ入学後約半年で中退することを決めた、と。

 奨学金を借りて通っていたんですが、現代美術をするのにこんなにお金を借りて通うのが本当に正しい道なのか疑問を感じるようになって。そうして中退をほぼ決めていたところで開催されたRAFの第2回が、僕にとっては二度目の大きな転機でした。その時に会場になっていた「キワマリ荘」で2歳年上のミシオさんという作家さんと出会ったんです。ミシオさんは京都の美大を中退して石巻で制作をしていたんですが、その存在感が僕には衝撃的だった。大学を辞めた後に詳しくお話を聞きに行ったら、そこから石巻の色々な作家さんと知り合って、「ART DRUG CENTER」の一室を運営をさせていただけることになって……。気付いたら週末に石巻に通う生活が始まりました。

ーそれから1年と少しで、自身が運営するギャラリーを開設することになる。そのスピード感に驚いたのですが。

「ART DRUG CENTER」を運営している有馬かおるさんや森章さんからたくさんのお話を聞いたり、勉強したり、自分で展示をしたり、とにかくそうしたことを繰り返しました。お二人から「制作以外の時間でも石巻の人と関わることはすごく大事」と言われて、2020年4月に移住したんですが、次第にもっと自由に挑戦をしたいと思うようになってきたんです。そうしたら有馬さんからこの建物の話をもらって、「もう全部イチから自分でやってみよう」と。

ーその原動力はどこから来るのでしょうか?

 まずは同じ世代の人たちに絶対に負けたくない、ということです。大学を中退した時に、みんながいたラインから一段落ちたような感覚になったんですよね。だから絶対「中退したやつ」というイメージのまま終わりたくない、どの同級生よりも目立つことをしたい、って思っていて。大学を中退したということもプラスに変えてやろうと思ってやってきました。

ー石巻ではさまざまな文化活動が盛んになってきています。刺激を受けたりするものでしょうか?

 まず、美術館も美大もないのところにアートシーンが出来始めているというのは本当にすごいことだと思うんです。それに色々な表現活動をしている人が多くいて、常に新しく何か始めようとしている。そんな街ってなかなかないと思う。震災というすごくマイナスなことがあった場所だけれど、だからこそ、少しでもプラスになるために何ができるか。石巻の人たちはみんなそうした感覚を持っているんじゃないかなと思います。

ー最後に単純な質問なのですが、石巻に来てから楽しいですか?

 楽しいですよ。学生のままでいたら考えなかったようなことをたくさん考えて、生き方を見つめられるようになりました。それに、やりたいことをできているという充実感があります。色々とギリギリだったりしますけどね(笑)。

THE ROOMERS’ GARDEN
住所|石巻市中央一丁目8−8
OPEN|毎週土日13:00〜18:00
公式HP|https://hsho8338.wixsite.com/theroomersgarden
12月26日まで平野将麻さんによる展示「箱庭」を開催中


WRITTEN by 口笛書店
2019年6月、宮城県石巻市に生まれた出版社。石巻に在る出版社だから作れる本、口笛書店だから出せる本というものはなんなのか。時間をかけて模索していきながら出版活動を行っていきます。地元での出版活動のほか、関東を中心に書籍の執筆編集、ウェブコンテンツの企画編集、広告、コピーライトなど、言葉を取り巻くクリエイティブコンテンツの制作も手掛けています。
公式HP|口笛書店

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